捨て寸のゴールデンルールと「指一本」の儀式
登山靴は歩行時に足が前後運動を繰り返すため、つま先に空間(捨て寸)がないと爪下血腫(爪の死)を招きます。2026年現在も、ハイカットモデルの適正な捨て寸は**実測値 + 1.0cm 〜 1.5cm**が鉄則です。
正しい計測の儀式: 本番用ソックスを履き、足を靴の先端まで寄せたとき、踵の隙間に「人差し指が一本すっと入るか」を確認してください。これこそがサイズ選びの絶対的なスタートラインとなります。
種類別・推奨捨て寸の目安
| 靴の種類 | 推奨される捨て寸 |
|---|---|
| ハイカット・ミッドカット | 1.0 cm ~ 1.5 cm |
| ローカット・トレランシューズ | 0.5 cm ~ 1.0 cm |
「大は小を兼ねない」:大きすぎる靴が爪を殺す理由
「大きめが安心」というアドバイスは致命的な間違いになることがあります。2.0cm以上の過剰な隙間は下山時に靴の中で足が滑走し、勢いよく先端に激突する原因となります。現在の主流は、長さ以上に**「踵(ヒール)と甲(インステップ)での固定」**を最優先することです。固定力さえあれば、捨て寸は最小限で十分機能します。
3Dスキャンが暴いた「幅広信仰」の誤解
最新の3D足型計測データによると、多くの人が自認する「幅広」は、単にアーチが崩れた**「開張足」**であるケースが大半です。骨格自体が太いわけではないため、安易に幅広モデルを選ぶと甲が余って前滑りを引き起こします。無理に海外ブランドを長さで調整するより、自分のラスト(木型)に合うブランドを選ぶことが肝要です。
フィッティングの最終調整は「インソール」で行う
標準のインソールをSuperfeet等の高機能品に換装するのは、2026年の常識的ハックです。深いヒールカップは踵をアンカーのように固定し、下り坂での前滑りを物理的にブロックします。安易にサイズアップする前に、インソールでの調整を検討してください。
現場のリアル:時間帯とヒールロックの結び方
- 午後3時の法則: むくみにより足が最大化する午後に試着するのが鉄則です。
- ヒールロック: 爪が当たる場合、サイズを上げる前に「ヒールロック」という結び方を試してください。これだけで踵が固定され、つま先に驚くほど余裕が生まれます。
ブランド別の罠:EUサイズ表記とアルトラの特異性
欧州ブランドのEUサイズ表記を単純なcm換算で信じるのは危険です。メーカーごとに基準が異なり、多くは日本人の足には細身に設計されています。また、Altraのような扇形の靴は従来の捨て寸概念が通用せず、常識を持ち込むとフィッティングに失敗します。
結論:1.0cmはゴールではなくスタートライン
捨て寸1.0cm〜1.5cmはあくまで安全圏への入場チケットです。その上で、「踵が浮かないか」「甲で止まるか」「インソールで微調整できるか」を実店舗の坂道テスト等で確認してください。他人の「バッチリ」はあなたの「地獄」になり得ます。妥協なきフィッティングこそが、最良のパートナーを見つける唯一の道です。